【読書感想】皆で独りの時間を過ごしたい夜もある 佐藤多佳子 / 明るい夜に出かけて

 

佐藤多佳子さんの「明るい夜に出かけて」を読みました。「一瞬の風になれ」とかタイトルを知っている本は多いけれど、実際に読むのはお初。

 

まずタイトルが良い。生まれた時から筋金入りのビビリの僕。誰が呼んだか越後のヘイポー。そんな性質と相反するようですが、僕は夜が好きですよ。しんと静まった空気感、ついつい夜更かししちゃうわ。

 

さて、この「明るい夜に出かけて」という話。主人公は1年という区切りで大学を休学し、コンビニで深夜バイトをしながらダラダラと日々の生活を送る富山。とある理由で女性に対して強いトラウマと拒否感を持っております。趣味は深夜ラジオ。

 

この「深夜ラジオ」が作品の重要な要素になっており、さらに実際にあったラジオ番組(具体的にはアルコ&ピースのオールナイトニッポン)が思いっきり作品に登場してきます。

 

そんなラジオ好きの富山と、そのバイト先の先輩鹿沢、バイト先にやってくるようになったちょっと変わったJK佐古田と、旧友……と言っていいのか分からない微妙な知り合いの永川が主な登場人物。

 

現実で出会った4人が、深夜ラジオやインターネットでの活動を通して緩く繋がっていくのがこの物語です。富山による口語体でつづられるラフな文体。

 

大きな事件などは特に起きない(起こったのは過去。それももう終わったこと)物語ですが、交流の中で少しずつ変わっていく、前に進んでいく登場人物たちを追っていくのは楽しかったです。後半は特にページを捲る手が止まらなかった。

 

夜中にいつ起きてても、ジャンピング・ビーンが一緒にいてくれる気がして。ジャンピング・ビーンもどっかで起きてて、この番組聴いてて、繋がってる気がした

 

孤独でもいいのにね。

でも、本当に孤独を愛する人間なら、夜の闇から響いてくる明るい声に、こんなに心を揺さぶられるものかな。人の声、明るい声、笑い、笑いを作る人々のざわめき。

深夜ラジオ。

 

作中で取り上げられているのは深夜ラジオですが、現在における配信とかSNSとかでも同じことが言える気がします。ネット文化の発展によって、現代人の夜の時間はとても長くなりました。

 

基本的には僕も一人が好きな人間ですが、ずっと一人ぼっちでいいかと言われるとそれはやっぱりノー。ぼーっと起きてる深夜に、ふと妙な寂しさを覚える時があります。その孤独感が勉強とか読書とかゲームとかに集中させてくれる時もありますが、どうにも耐えられない時もある。

 

特に僕はそもそも寝付きがよくないので、どうにもこうにも眠れない日があります。そんな時、ふとTwitterのタイムラインを開いたら、5分前に知り合いがツイートしていた……なんて時、ふっと安心するのです。こいつもまだ起きてんのか、みたいな。

 

好きな配信者の深夜配信を見ちゃうのも同じ心境かも。画面の中で喋る配信者と、流れるコメントを見ていると、まだこんなに沢山の人が起きてんだなあと思ってホッとする時がある。

 

やっぱ寂しいのよ、独りって。収録されたテレビ番組とかじゃなくて、リアルな時間を共有する人の存在を感じたくなる時があるのよ。25歳の成人男性にだってそんなおセンチな夜があるんだもの、皆そういう夜があるはずよ。

 

秋の夜長と呼ばれる時期。部屋に一人で、ふと寂しさを感じた時にこの本を手に取ってみてほしいと思います。きっと染みると思うわ。

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