【曲紹介・解釈・解説……等々】スピッツ / 新月

日中は変わらずクソ暑い日々ですが、夜になると空気がだいぶ涼やかになったのを感じます。秋です。エアコンがいらなくなってきました。

 

「秋の夜長」とも言いますが、この季節はとにかく夜の時間がいい。静かでひんやりとした空気感と、ささやかに鳴る虫の鳴き声……。そんな時間に、じんわりと聞きたい曲がある。

 

 

2010年発売のアルバム「とげまる」に収録されている「新月」という曲です。めっちゃくちゃ好きな曲の一つです。繰り返されるピアノの旋律が特徴的で、とにかく美しく、それでいてどこか空恐ろしい、そんな曲。

 

神秘的なピアノサウンドと、どこか冷ややかな響きのマサムネさんの声、そしてバックで轟音のように鳴り響くギター。このコントラストが、何とも言えぬ幻想的な雰囲気を作り出しています。聞けば聞くほどハマっていくわ。

 

さて、歌詞のほうはそんなに長くありません。だからこそ、不思議で良く分からない世界観です。いつものことやな。ざっと全部見てってしまいましょうか。

 

正気の世界が来る 月も消えた夜

目を開けて

明日には会える そう信じてる

あなたに あなたに

変わって見せよう 孤独を食べて

開拓者に 開拓者に

徐々にざわめき出す

知らないままでいることはできない

明日には会える そう信じてる

あなたに あなたに

止まっていろと 誰かが叫ぶ

真中に真中に

それでも僕は逆らっていける

新しいバイオロジー

変わって見せよう 孤独を食べて

開拓者に 開拓者に

 

タイトルにもなっている通り「月」がこの曲のキーワードです。

 

月といえば、しばしば「狂気をもたらすもの」として見られます(特に西洋では)。「lunatic」という単語の意味は「精神異常者」とか「狂気の」とか、そんな感じの意味です。ハリポタに登場する「ルーナ」というキャラの名前の由来はここから来ているんですね(ハリポタファンの余談)

 

「正気の世界が来る」とは、狂気をもたらす月が消えるということ。これがタイトルの「新月」ですね。そして新月になるのは基本的に月に一度(ですよね?)。つまり、この曲の主人公にとって、殆どの時間は「狂気の世界」なのだと考えられます。

 

この「狂気の世界」は、自分以外の人間が全て狂人になってしまった! みたいな、バイオハザード的世界観ではなく、主人公の主観によるものだと思います。

 

続いてサビ。歌詞をさらりと見てみると、なんだか「自殺の歌」っぽいような気もします。止める誰かの叫びに逆らって、あなたに会うためにこの世界から出ていく……的な。

 

でもそれなら、あなたに「明日には会える そう信じてる」とは歌わないのでは。「あなたに会いに行く」なら分かりますが、この歌詞だと、会えるかどうかの確証はなさそうです。「明日」という時間の概念を持ち出しているところからも、死の世界であなたに会いに行くという構図は浮かんできにくい。

 

このあたりを踏まえて浮かんでくるのは、世界に抗う青年の姿です。彼に向けて、「真中に留まれ」と誰かが叫んでいます。集団、同調、均質化、またはそれを強要する圧力が見えてきます。

 

青年は、このような世界に染まるまいと抗っているのではないでしょうか。青年からすれば、世界はクソつまらなく、狂っているように見えるのでしょう。

 

同調圧力に屈せず、誰からも理解されなくても、その孤独を糧にして生きていく、前に進んでいく強い精神力が彼にはあります。そうして進んだ道の先に、いつか「あなた」がいると信じているのです。

 

この「あなた」が誰かはよく分からないですが、憧れの人(色恋に限らず)でもいいし、理想の自分としてもいいかも分かりません。

 

というワケで僕が思う「新月」とは、均質化を求める世界に屈せず抗い続ける、異端児上等な青年の歌、でした。もうちょい身近にするならば、「中二病の歌」としてもいいかも。

 

非常に美しく、それでいて恐ろしく、轟音が鳴り響いているのに静かな感じがする、そんな不思議で魅力的な歌です。長い夜のお供に、いかがかな。

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