【読書感想】寺山修司 / ポケットに名言を

どうも、新人営業ぬまじり(3年目)です。何か本を読みたい。それも、心に何かを残してくれるような、そんな「良い」本が──。

 

などと思うことがまあまあありますが、往々にしてそういう書物は読むのに非常にカロリーを消費します。僕も、書店で見つけて買ってみたはいいけど、中々読み出さないで本棚の肥やしになっている本が沢山。まあその手の本は自分の部屋の本棚に並んでくれているという事実だけで心を豊かにしてくれるので、よしとしましょう。

 

そんな時に、気軽に読める「良い」本として勧められそうなのがこちらの一冊。

 

 

歌、詩、演劇、評論その多諸々、数多くの文芸作品を発表した寺山修司著の「ポケットに名言を」です。タイトルのちょっぴり可愛らしい響きが好き。

 

こちら、どういう趣旨の本なのか。文庫本あとがきに次のような一節がありました。

 

「名言」などは、所詮、シャツでも着るように軽く着こなしては脱ぎ捨ててゆく、といった態のものだということを知るべきだろう。

 

とのこと。その言葉を生んだ作者の生い立ちとか、当時の社会情勢とか、そんなややこしいことは一切気にせず、ただ「名言」としてある言葉だけを見て、好きなように味わえばよい……というようなことですかね。

 

中身は実にシンプル。寺山修司が選んだ名言(小説や詩、映画のセリフや歌謡曲の一節などからも抜き出されています)が、少しばかりのコメントを挟みつつ、ある種無機質に、淡々と記されていくだけの内容になっています。

 

名言とされる言葉以外の余計な情報が紹介されていないので、自分自身で純粋にその言葉を味わうことができる。ピンとくる言葉もあればこない言葉もあり、気楽にペラペラとページを進めることができました。空いた時間に数ページペラペラ捲るだけでもいい本だと思います。

 

折角なので、僕が気に入った「名言」達をここで紹介していこうと思います。背景などは全く承知していないので、的外れなコメントも多いと思いますが、まあ気にせんといてや!

 

死のうと思つてゐた。ことしの正月、よそから着物を一反もらつた。お年玉としてである。着物の布地は麻であつた。鼠色のこまかい縞目が織りこまれてゐた。これは夏に着る着物であらう。夏まで生きてゐようと思つた。 太宰治「晩年」

 

決意した自死が些細な贈り物ひとつで「生きていよう」という思いに変わる様。人間が生きていく動機付けなんて所詮そんなもんなんですかね。

 

幸福とは幸福をさがすことである。 ジュール・ルナアル

 

探すという行動を取るエネルギーになるほど、この世界には自分がまだ見ぬ「幸福」がある! と信じることが出来ている、ということは幸せなことだよなと思いました。

 

五十歳までは、世界はわれわれが自分の肖像を描いていく額縁である。 アミエル「日記」

 

所詮人は自分の主観でしかものを見ることが出来ないから、自分が見てる世界は自分が見たい世界なんですよね。自分の願望が入っているということは、即ちそこに自分自身の姿がある……ということでしょうか。自分自分ってうるさいな自分。

 

ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとはだれにも言わせまい。 ポール・ニザン「アデン・アラビア」

 

僕でも聞いたことのある有名な一節。若いねえ、青春だねえと、その時から離れてみてみればなんだか爽やかで美しいものに感じますが、当時は当時でボロボロになって泥水でもすすりながら必死に生きていたんだよなあ……まあ僕はそんな必死には生きてなかったけど。

 

……こんなところですかね。

 

気が向いたときに手に取れるくらいのサイズ感、内容なので、また折に触れて読み返してみたいと思います。多分その時はまた別の「名言」が心に残ることでしょう。

0PEOPLE