【読書感想】恩田陸 / 木漏れ日に泳ぐ魚

新潟の冬は基本的に天気が悪い。天気が悪いならばおとなしく家に引きこもるが吉。けれど、出かけたい欲は抑えられない! そんなに時には本を読むのです。活字の世界の広がりは無限大だ。1ページ開くだけで瞼の裏に浮かぶ情景は移り変わり、たった1センテンス読むだけで世界が逆転することもある。本を読むとは、果てない世界への冒険なのだ……。

 

……ハイ。というわけでどうも、新人営業ぬまじり(2年目)です。今回紹介するのは恩田陸さんで「木漏れ日に泳ぐ魚」です。

 

 

舞台はアパートの一室。この部屋に住んでいた高橋千浩と藤本千明という男女が、別々の道を行くためにアパートを出る最後の夜に語りあう話です。物語は千浩と千明の視点を交互に繰り返しながら、二人の会話の応酬、そして回想を挟みながら進んでいきます。

 

会話の目的は2人とも共通していました。それは、「千秋(千浩)は、一体なぜあの男を殺したのか?」という疑念を明らかにするため。お互いがお互いを、とある事件の犯人だと疑っており、その動機・理由を相手に白状させるため、最後の夜を徹して語り合うことに決めたのでした。

 

読者の方へあまり情報が解禁されぬまま話は始まります。読み進めていくに従い、だんだんと二人の関係、二人が置かれた状況、二人が共有している過去、そして明らかにしようとしている謎の正体が明らかになっていきます。ぼやけた輪郭が、だんだんとはっきりしていき、「あー、そういう話なのか」と分かっていくような印象がありました。個人的な印象では、この本は「禁じられた愛、許されない愛」の話かなと思います。

 

物語の終盤、とある事実が判明するとともに、千秋が千浩への興味を一気に失っていくのが興味深かったです。愛は障害があるほど燃えるというもの。思うに、その問題を知らなかった頃からも、本能的にはどこかで悟っていたのではないかな。で、その問題が本当は存在しないものだったと分かって醒めたと。あとは「今まで悩んでたのは一体なんだったんだ」というやるせなさと、一種の開き直りのようなものでしょうか。

 

ラストシーンの情景は綺麗です。美しい情景描写や抒情的な描写が、この作者は上手だなと思います。分かるようで分からない、詩的な感じ。雰囲気に浸るにはもってこい。そのかわり、割と結末が曖昧な作品が多いような気もします。この辺で好みが分かれるのかなと思いますね。「木漏れ日に泳ぐ魚」も、まさにそういう一冊でした。僕はわりと好きですけどね。

 

 

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