【読書感想】現実的な冒険ファンタジー 宮部みゆき / 過ぎ去りし王国の城

どうも、新人営業ぬまじり(2年目)です。

 

今回読んだのは宮部みゆきさんの「過ぎ去りし王国の城」です。角川文庫より2015年に単行本として発刊。そして2018年に文庫化されました。例によって僕は文庫本で読んでいます。

 

 

宮部みゆきさんの本はいくつか読んでいます。様々なジャンルで本を書かれていますが、僕はファンタジーが一番好きですね。王道も王道ですが、ブレイブ・ストーリーは小さい頃に擦り切れるほど読んでました。ということもあり、この本は表紙&タイトルを見て即レジへ運んでいました。

 

宮部さんのファンタジーは基本的に現実世界の問題も密接に絡んでいるのが特徴ですが、今作はそのブレンドが現実世界多めになっています。

 

主人公は2人。尾垣真城田珠美。2人は一足先に高校受験を終えた中学三年生です。物語は、なんやかんやあって真が手に入れた1枚のスケッチから始まります。そこには見知らぬ古城が描かれており、その出来栄えは見事でした。やがて、絵に分身を描き込むと、その絵の中に入り込めることに気付いた真は、同級生の美術部員、城田珠美に協力を依頼するのでした。

 

というのがあらすじ。これを見ると絵の中の世界を冒険するファンタジー小説のような印象も受けますが、前述の通り本作は異世界を冒険しながらも、現実世界に軸を置いた物語です。

 

真は存在感のなさを除けば普通の男子中学生ですが、珠美はというと、学校にも家庭にも居場所が無い、孤独な女子です。古城の絵が「ある可能性」を秘めていることに気がついた珠美が、その時にとる選択がこの話の山になっています。

 

「あたしの今の暮らしはね、弱いあたしだと、乗り切っていかれない暮らしだから。あたしは自分の弱さを認めちゃいけないんだ」

 

物語の語り部は真ですが、主人公と言えるのは珠美の方ですね。大人びた(スレた、と言ってもいい)珠美と比較すると、落ち着いてはいるものの、真は良くも悪くも少年。終盤ではやや展開に置いてかれている感もありましたが、最後の2人の戦友とでも言うべき関係は、なんかいいなと思いました。

 

決して大団円ではなく、報いを受けるべき人物にはなんのお咎めもないままだし、珠美の抱える問題も何一つ解決していません。今後も強く生きていかざるを得ない珠美の境遇を考えると切ないものがあります。

 

ビターな結末ですが、希望もあります。小さな光ではありますが、案外人生ってこういうものなのかも、とも思いました。基本的に人生って辛いことの方が多いし、それに折れないように人を支えているのは些細な希望なのかも。

 

真と珠美が最後に交わした約束が果たされる日が来ることを願っています。

 

 

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