【読書感想】優しい嘘に救われる 道尾秀介 / 透明カメレオン

カメレオンと言えば、体色の色を自在に変化させて周りの景色に擬態する(最も、それが主目的ではないようですが)ことで有名な生物ですが、「周りの景色に溶け込む」という部分をオーバーに受け取りすぎた結果、小さい頃の僕はカメレオンを「透明になれる生き物」だと思っていました。

 

なので始めてテレビの映像でカメレオンを見たときは、全然見えるやん! モロ出しやん! と、勝手にショックを受けた思い出があります。というわけでどうも、新人営業ぬまじり(2年目)です。

 

今日は読んでみたシリーズということで、紹介するのは道尾秀介さんの「透明カメレオン」です。

 

 

見えるものしか見えなくなってしまったのは、いつの頃からだろう。

 

道尾秀介さんの作家人生10周年を記念して書かれたという小説で、作者はこの一冊を指して「初めて自分のためではなく、読者のために小説を書いた」と述べています。

 

主な登場人物は、人を惹きつける素晴らしい声と冴えない見た目が特徴的なラジオパーソナリティ、桐畑恭太郎とその行きつけのバー「if」に集まる常連たち。そしてある日そこに駆け込んできた謎の美女、三梶恵。なんやかんやあって、彼らは恵の指示によりとある殺人計画を手伝わされることになって……というのがあらすじ。

 

殺人計画の片棒……と言ってしまうとなんだか物騒になってきますが、分類的にはエンタメ小説なので、終始ドタバタした感じで物語は進みます。キャラも明るいし会話もテンポが良い。しかし、その明るさがラストで大きな意味を持ってきます。

 

読み終えた時、最初は「少し唐突だな……」と思いましたが、このラストで今まで見てきた物語の意味がひっくり返るということに気付きました。そして、ああこれはめちゃくちゃ優しい小説だなと思いました。

 

この一冊を通して流れているテーマは、やはり「優しい嘘」でしょうか。登場人物は皆嘘つきですが、皆凄く優しいのです。

 

現実に押しつぶされそうになったのなら、一度そこから目を逸らして、リハビリしてみても良いんじゃない? と言ってくれるような感じがする本です。現実逃避を許容してくれるような優しさがいいなあと思いました。

 

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