【読書感想】大人は皆かつてのサバイバー 桜庭一樹 / 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

どうも、新人営業ぬまじり(2年目)です。「料理のさしすせそ」での僕の推しメンは酢ですが、砂糖も捨てがたいですね。他のメンバーも、唯一無二の個性と存在感を持った連中で、つまるところ皆好きです。オイオイ、モンスターグループじゃねえか。

 

というわけで今回は最近密かに力を入れている読んだものシリーズ。今回は桜庭一樹さんの「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」です。かなり有名な作品で、タイトルは大分前から知っていたような気もしますが、実際に読んだのは今回がお初。

 

 

角川文庫の新装版です。元々ライトノベルとして発売されていた本なので、最初の表紙は2人の美少女が描かれたラノベらしいものでした。読み終えた今見ると、表紙との落差が半端ないです。

 

主人公は2人。片田舎に住む女子中学生の山野なぎさと、なぎさの通う中学校に転校してきた海野藻屑という少女。

 

もうこれは作中冒頭で示されているのでここに書いてしまいますが、海野藻屑はやがて殺害されてしまうことがいきなり分かります。そこから時間は藻屑が転入してきた頃に戻り、藻屑が殺されるに至った経緯が描かれます。

 

陰惨な物語ではありますが、世界に立ち向かう子供を描いているという点では紛れもなく青春小説と呼べるでしょう。だいぶハードだけれども。

 

山田なぎさはかなり冷めてるというか、現実的な少女で、早く社会と戦うための力が欲しいと思っています。それは平たく言えばお金。中学生という肩書きでは決して手に入らないそれを、作中では「実弾」と表現されています。

 

その実弾と対照的に位置付けられているのが、タイトルにもある「砂糖菓子の弾丸」です。海野藻屑は、この甘いだけでなんの役にも立たないこの弾丸を誰彼構わず打ちまくるような少女です。言ってしまえば電波系。なにせ転校初日の自己紹介で「ぼくはですね、人魚なんです」と言ってのけるくらい。

 

はじめはそんな藻屑をうっとおしく思うなぎさですが、なんだかんだと交友を深めていくことになります。その中で、実は藻屑は一般的な中学生が考えもつかないくらいに壮絶な戦場の中にいて、砂糖菓子の弾丸を打ち続けていなきゃたっていられないような状況にあるということが分かります。

 

「こんな人生、ほんとじゃないんだ」

 

彼女たちが「子供」であることの無力感をまざまざと突きつけれる様は読んでいて辛く、終始胸を締め付けられます。そして、かつての「子供」であった担任教師の述懐も心に残りました。

 

俺は大人になって、教師になって、スーパーマンになったつもりだったから。山田のことでも、おまえに嫌われてもいいから、高校行けるようになんとかしてやろうって張り切ってたし。海野の家だってなんとかするつもりだった。ヒーローは必ず危機に間に合う。そういうふうになってる。だけどちがった。

 

最初はただの無能と思っていましたが、彼の告白を聞いてなんだか凄く謝りたいような気持になりました。彼は有能ではありませんでしたが、決して悪人ではなかったんですよね。彼の味わった無力感もまた心に刺さるものがあります。

 

砂糖でできた弾丸では子供は世界と戦えない。

あたしの魂は、それを知っている。

 

僕が年間に読む本なんて精々が60~80冊。一番読んでいたころでも100冊ちょっとでしょう。だから、世の中には読んだことのない本の方が多いわけですが、この本はもう少し若い頃に読んでおきたかったなと思いました。売れた本にはそれなりの理由があるもんだ。

 

 

 

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