相棒をこの手で殺めてしまった罪深き男

——魔物っていうのは、案外日常生活に潜んでいるもんだ。

 

その日も、いつもとなんら変わりない朝だった。数分単位での二度寝をかましつつ(あまり良くないと聞いた。しかし、起きることを諦め、再び眠りに落ちることを選んで布団に身体を静めた時の、あの一瞬の快楽には逆らうことなどできまい)、ダラダラと出勤準備を済ませ、家を出る。それだけのはずだった。

 

イヤホンを片耳に嵌め、玄関扉のドアを開けて、締める。そして鍵をかけるために扉を見た時、違和感に気がついた。耳から伸びるイヤホンコードが、玄関扉に挟まっていたのだ。僕は焦りながらも急いでイヤホンを扉から救出する。生還したイヤホンは、見た目こそ変わりないが、明らかに聞こえ方が変わっていた。

 

音数が少ない。音量が安定しない。時々接続が切れてしまう。

 

彼はもうイヤホンとしての機能を全うすることが出来ない体になってしまっていた。そんな体にしたのは他でもない、相棒の僕自身だ。彼はいつだって僕の耳に音楽を届けてくれたのに。外界との間に壁を貼り、人見知りな僕を守ってくれていたのに。僕が彼を殺したんだ。

 

僕はその場に崩れ落ち、彼の名を泣き叫んだ。そんな資格など僕にはないのに。彼を抱く僕の手は、彼の血に染まっているというのに。

 

僕は罪に塗れてしまった。もう落ちることはない。僕は一生この十字架を背負っていかねばならない。

 

咎人となった僕にも、太陽の光は等しく降り注ぐ。しかしそれは優しい暖かな光ではない。まるで僕を焼き殺そうとしているかのようだった。

 

息苦しい。喉を絞められているような感覚だ。なあ、お前なのか? 僕が殺したお前が、僕を殺そうとしてるのか? もしそうだというならば、僕がそれに逆らう理由はない。甘んじてお前の復讐を受けよう。

 

もう動かないお前を耳にはめ、目を閉じる。触覚だけになった世界で、ゆっくりと首にコードが巻き付いてくるのを、僕はどこか遠い世界の出来事のように感じていた——。

 

……ということがこの前あったので、イヤホンを買い替えることにしました。どうも、新人営業ぬまじり(2年目)です。

 

どうせなら今はやりのBluetoothにしたろうと思い、Amazonを捜索。早速ポチってしまいました。ビックリするくらい安くなっていたのが少し怖くはありますが、とりあえず今は到着を楽しみに待ちたいと思います。首がどんどん伸びちゃうよ~。

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