普通って、何? 村田沙也加 / コンビニ人間 - ②

どうも、新人営業ぬまじりです。今日も引き続き「コンビニ人間」について書きます。前回は登場人物の紹介をダラダラ書いていたら、話の終わりで無念の字数制限(勝手に決めました)となってしまい、結局話のさわりだけで終わってしまったので、今回こそ感想を書いてゆきます。

 

さて、共に30代でコンビニバイト。結婚どころか恋愛経験もない恵子と白羽ですが、なんやかんやあって、なんとこの2人、一緒に住むことになります。

 

ここだけ抜き出すと、「ああ、きっと今まで上手く生きてこれなかった2人が出会い、紆余曲折ありながらも絆を深め、2人で立ち直る感動のラヴ・ストーリーなのね……」と思ってしまう方も中にはいるかもしれませんがぁ~~残念ッ! このお話には恋愛の「れ」の字もありません!

 

白羽が恵子の家に居着いたのは、簡潔に言えば「ヒモになるため」で、恵子がそんな白羽を家に置いているのは、「男と一緒に住んでいると言うと、周りの皆が勝手に喜んでくれて都合がいいから」です。う~ん、合理的!

 

白羽と恵子は境遇的には結構似ているものがありますが、その価値観は全く違います。正確には、白羽の持っている価値観は、歪んでいたとしても所謂「普通」、「こちら側」の範疇で、恵子の価値観は「あちら側」にあるので、共通するところが殆どないんですよね。

 

そんな二人の会話の噛み合わないっぷりといったら、もはや痛快とまで言える域にまで来てます。アンジャッシュのコントを思い出しました。

 

その片割れである白羽という男は、常に周囲に対して不満を持っていて、自分に優しく、そして他人に厳しく、常に攻撃を続ける男です。曰く、

 

「この世界は異物を認めない。僕はずっとそれに苦しんできたんだ」

 

この世界は、縄文時代と変わってないんですよ。ムラのためにならない人間は削除されていく。狩りをしない男に、子供を生まない女。現代社会だ、個人主義だといいながら、ムラに所属しようとしない人間は、干渉され、無理強いされ、最終的にはムラから追放されるんだ

 

とのこと。主張だけをみれば、なるほどそうだなと思わせる部分はあります。恵子が「男と一緒に住んでいる」と言った時の、周りの人達の異様とも言える、無条件の祝福を見ると、特に。

 

良かったね、これでやっと普通になれるんだね。「治った」んだね。と、その男がどういう奴か、どんな暮らしをしているのかを聞くことなく、彼女たちは喜びます。きっと彼らの中では「ある程度歳をとった人間は、異性と一緒に暮らすこと」が、「普通」であることの十分条件なのでしょう。

 

こういう描写(若干オーバーに描かれている気もしますが)を見て考えると、白羽の言うこともあながち間違いではないかなと思います。自分のことで考えてみても、「○○な時は、普通なら~~する」「□□になったら、××なのが普通」みたいな感じで、かなり曖昧に不文律化されている「普通」を行動基盤としていることに気付きます。

 

この枠組みの外にいる恵子の視点から冷静に「普通」の中にいる人を見つめ直した時、どこか滑稽なものを感じさせられました。普通ってなんなんでしょうね。

 

芥川賞は所謂「純文学」の賞とされているので、その受賞作! と言われると、なんだか小難しい本のように思ってしまいますが、近年は割とその境が薄れてるような気がします。現にこの本も読みやすいです。就寝前の1時間にどうぞ。

 

 

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